研究概要 |
メタクリル酸メチル、ベンジル、2-プロピル、t-ブチル、およびl-フェニルジベンゾスベリル(MMA,BzMA,2-PrMA,t-BuMA,およびPDBSMA)の重合を、少量のピリジンを含むクロロホルム中60℃でα,α′-アゾビスイソブチロニトリルあるいは(i-PrOCOO)_2を開始剤として、N,N′-ジサリチリデンエチレンジアミナトコバルト(II)(1)、(R,R)-N,N′-ビス(3,5-ジ-t-ブチルサリチリデン)-1,2-シクロヘキサンジアミナトコバルト(II)(2)、ビス((R)-l-フェニル-N-サリチリデンエチルアミナト)コバルト(II)、-ニッケル(II)、あるいは-銅(II)等の存在下に行った。1および2の存在下でのMMA,BzMA,2-PrMA,およびt-BuMAの重合では、反応の進行に伴い生成ポリマーの分子量が増加した。また、生成ポリマーは末端にビニリデン基を有するマクロモノマーであることが明らかになった。これらの結果から、金属錯体と成長ラジカルとの相互作用によりラジカルは安定化しリビング重合的な成長を行うが、α-メチル基からのβ-水素脱離による停止が併発し、重合系全体としてはリビング系でないことが示唆された。錯体の1および2の存在下で得られたポリマーには、錯体を用いずに合成したものに比べて、5連子のrrrr含量がより低く、mm-中心の5連子の含量がより高い傾向が見られ、遷移金属により立体規則性の制御が可能であることが明らかになった。さらに、光学活性な2を用いたPDBSMAのらせん重合では、一方向巻きのらせん構造を有する光学活性ポリマーが得られた。
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