研究概要 |
反応の立体制御を目的として、(R,R)-N,N′-ビス(3,5-ジ-t-ブチルサリチリデン)-1,2-シクロヘキサンジアミナトコバルト(II)(1)を含む様々なコバルト錯体存在下でのビニルモノマーのラジカル重合を行った。メタクリル酸トリフェニルメチルの重合の立体化学は、コバルト錯体の存在に強く影響され、特に1は三連子イソタクチシチ-を約20%程度減少させ、同時に生成物の分子量分布を狭くする(Mw/Mn1.2-1.5程度)効果をもつことが明らかになった。また、種々のソルビン酸エステルの、コバルト錯体を用いない通常のラジカル重合では、比較的高分子量(Mn13万程度)の1,4-トランス重合体と併せて比較的低分子量(Mn3千程度)の未反応ビニル基を持つポリマーが副成することを見いだし、1を重合系に添加することにより低分子量ポリマーの生成を抑制することに成功した。さらに、通常のラジカル重合でほぼ完全にイソタクチックでらせん構造を持つポリマー(左右のらせんの等量混合物)を与えるメタクリル酸1-フェニルジベンゾスベリルを、光学活性な1の存在下で重合したところ生成ポリマーのらせんの向きが制御され、完全に一方向巻きのらせん構造をもつ光学活性ポリマーが得られた。また、錯体1はスチレン、酢酸ビニルの重合制御にも有効で、リビング的な成長を実現し、生成物の立体構造には錯体の影響が僅かだが見られた。これらの重合での錯体の影響は、錯体の配位子の構造により異なった。
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