研究課題/領域番号 |
07455371
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
高分子合成
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小林 一清 名古屋大学, 工学部, 教授 (10023483)
|
研究分担者 |
松浦 和則 名古屋大学, 工学部, 助手 (60283389)
西田 芳弘 名古屋大学, 工学部, 助教授 (80183896)
|
研究期間 (年度) |
1995 – 1996
|
キーワード | 超分子 / 精密認識 / 生体機能材料 / 糖鎖工学 / Biomimetic Materials |
研究概要 |
牛乳の中に含まれているシアリルラクトースと呼ばれるオリゴ糖を牛乳から単離精製した。シアリルラクトースとp-ビニルベンゾイルクロリドとから、反応効率の高いβ-N-グリコシル化を駆使してスチレン誘導体を合成し、そのラジカル重合を行って糖鎖高分子を高収量で得た。このシアリルラクトース結合ポリスチレンがインフルエンザウイルスと強く結合することを、静岡県立大学薬学部の鈴木康夫教授との共同研究で明らかにした。シアリルラクトースのオリゴ糖そのものでは、このような機能を発現しない。したがって、シアリルラクトース高密度で高分子に結合しているために、いわゆるクラスター効果あるいは多価(multi-valency)効果が発現して、インフルエンザウイルスの表層にあるヘマグルチニンタンパク質のシアル酸結合部位に強く取り込まれたものと考えた。 次に、大腸菌の表層にあるコロミン酸と呼ばれる多糖の加水分解により調製されたシアリル二糖を原料として用いた。シアリル二糖とp-ビニルベンジルアミンをBOPあるいはHOBtの略称で呼ばれるペプチド縮合剤の存在で反応させて、シアリル二糖結合スチレンを調製し、その単独重合およびアクリルアミドとの共重合を行った。シアリル二糖には二種類のカルボキシル基があるので、どちらが反応してアミドを形成したのかを、酵素シアリダーゼを活用して調べた。その結果、シアリル二糖の還元性末端にあるカルボキシル基がアミドを形成することが明らかとなった。 このような二種類の貴重なオリゴ糖を用いて、ほとんど一段階でポリペプチドに結合されることを試みた。まず、シアリルラクトースの還元性末端にアミノ基を導入して、ペプチド縮合剤の存在下にポリグルタミン酸との反応を行って、シアリルラクトース結合ポリグルタミン酸を調製した。このものとインフルエンザウイルスとの結合を調べたところ、上記のポリスチレン誘導体に比べると弱い機能を示したにすぎなかった。また、シアリル二糖とポリリシンとの反応を同様に行って、シアリル二糖の還元性末端のカルボキシル基が反応した生成物を調製した。 シアリルラクトースおよびシアリル二糖は、天然の糖タンパク質や糖脂質のオリゴ糖鎖のなかに含まれる貴重な糖鎖であり、特有の重要な機能を発現している。本研究で合成した人工複合糖質高分子は、これらの天然糖鎖の生体機能と関連づけて解析するための、重要なモデル物質となると考えている。
|