本研究では、電子・光機能の期待される新規置換ポリアセチレンの設計と合成、置換アセチレンモノマーの重合に適した触媒の開発と重合条件の確立、生成ポリマーの特性の解明、およびそれらの電子・光機能の開発などについて研究を行った。以下に研究成果の概要を述べる。 1.新規置換ポリアセチレンの設計と合成に関する研究-オルト位にパ-フルオロ-n-ヘキシル基、(トリアルキルシリル)メチル基、などのかさ高い置換基を有するフェニルアセチレンの重合を検討し、新しい高重合体を合成した。別のタイプのモノマーとして、カルバゾリル基、トリメチルゲルミル基などを有するジフェニルアセチレンをTaCl_5系触媒を用いて重合することにより新規ポリマーを得た。さらに、3-(N-カルバゾリル)-1-プロピン、1-フェニルチオ-1-デシン、1-ブチルチオ-2-フェニルアセチレンなどからヘテロ原子を含有する新規ポリアセチレンを合成した。 2.置換ポリアセチレンの構造と性質に関する基礎的研究-3種のポリマーの光励起状態の可視近赤外時間分解スペクトルを300フェムト秒以下の時間分解でもって測定した。また、20種以上のポリマーの紫外線光電子スペクトルを測定し、イオン化しきいエネルギーを決定した。この値は、最低励起エネルギーと対応関係にあることを明らかにした。 3.置換ポリアセチレンの電子・光機能に関する研究-核置換ポリ(ジフェニルアセチレン)およびポリ(1-フェニル-1-アルキン)を用いたエレクトロルミネッセンス(EL)デバイス(ITO/polymer/Mg-In)より緑ないし青色の発光が観測された。さらに、9-アントリルアセチレン共重合体、ポリ(N-カルバゾリルアセチレン)などの3次感受率を測定したところ、いずれもポリ(フェニルアセチレン)の10倍〜100倍の大きい値を示した。これらの値は紫外可視吸収における吸収端と対応関係にあった。
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