研究概要 |
本研究は、糖鎖高分子を一成分とする新しいタイプの両親媒性ブロックコポリマーをリビングカチオン重合法を用いて合成し、その構造特性と機能特性との相関を明らかにすることを目的とする。本年度は、上記の両親媒性糖鎖ブロックコポリマーの合成原理を確立すると共に本合成法に適用可能な開始剤系および糖鎖含有モノマーの開発を併せて行い、以下の成果を得た。 1.,リビングカチオンブロック共重合により、構造の明確な一連のグルコース含有両親媒性ブロックコポリマーを合成した。さらに、透過型電子顕微鏡観察により、ポリマー薄膜の表面モルホロジーと分子構造(鎖長および組成比)との相関を明らかにすると共に、ポリマーの一次構造制御により表面モルホロジーが制御可能であることを示した。 2.グルコサミン残基を側鎖に有するビニルエーテル(VE)モノマーを新たに設計し、そのリビングカチオン重合に成功した。さらに、生成ポリマーの脱保護反応により、側鎖にアミノ糖であるグルコサミンを有しかつ分子量や分子量分布が制御された新しい糖鎖ポリマーを得ることに成功した。 3.エステル系保護基あるいはエーテル系保護基を有する2種類のグルコース含有VEのリビングカチオン重合を、種々の開始剤系を用いて検討した。重合のリビング性並びに実用的な観点から検討した結果、エーテル系保護基を持つVEのリビングカチオン重合にはHI/ZnI_2開始剤系が、他方エステル系保護基を有するVEの場合はCH_3CH(OiBu)OCOCF_3/EtAlCl_2/1,4-ジオキサン開始剤系がより適していることを明らかにした。 今後は、両親媒性糖鎖ブロックポリマーの性質に焦点を当て、特にキャスト膜表面の環境応答挙動について詳細な検討を行うと共に、単分子膜の作製と機能特性についても検討を加える予定である。
|