本研究の目的の一つはできるだけ分子量の揃った星型ポリアミノ酸を合成し、ポリマー構造と二次構造の関連性について検討することにある。分子量測定は当初の予定を変更し高分子量ポリマーの分子量が求められる光散乱検出器(購入設備)で行った。まず従来から用いてきたヘキサキス(4-アミノフェノキシ)シクロトリホスファゼン(AOP)を開始剤としたγ-ベンジル-L-グルタミン酸及びε-カルボベンゾオキシ-L-リジンのNCAの重合をDMFあるいはジオキサン中で行った。ポリアミノ酸中の芳香族一級アミノ基の定量及び^<13>C NMRスペクトルから得られたポリアミノ酸はいずれもホスファゼンを核とする6本鎖ポリマーとなっていることが示された。しかしながらその分子量は高分子領域に片をもち分散度(M_w/M_n)はM_w/M_n=1.6-2.0となり、分子量分布の広いポリマーが生成していることが明らかとなった。この結果は開始反応より成長反応が速くホスファゼン環上の一部のポリアミノ酸鎖が著しく成長したポリマーが生成していることを示唆している。このため、より開始活性の高いヘキサキス(4-ベンジルアミノ-1-オキシ)シクロトリホスファゼン(AMOP)を新たに合成し、上記モノマーの重合を同様に行った。得られたポリマーの分子量及び分散度を求めたところ、分子量は計算値と比較的よく一致しAOP開始系で認められた高分子領域の片も認められず、M_w/M_n=1.2-1.3の6本鎖星型ポリアミノ酸を得ることができた。この新規開始剤の開始速度は成長速度より約20倍速いと思われることからホスファゼン核から成長した各ポリアミノ酸鎖も比較的揃っているものと思われる。これらポリマーのIR及びCDスペクトルはいずれも特徴的なα-ヘリックス構造に由来する吸収を示した。このように目的とする分子量が比較的揃った6本鎖ポリアミノ酸をAMOPを用いることで得ることができ、分子量と二次構造の関係及び製膜性のすぐれたポリアミノ酸を有する分離膜の合成等の検討を現在行っている。
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