研究概要 |
1.ポリエチレンテレフタレートの構造とトライボロジー ポリエチレンテレフタレート(PET)について摩擦試験を行い、その摩擦トラックの超薄切片試料を作製した。電子線回折の結果、PET分子は分子軸が摩擦方向に配向し、ベンゼン環が摩擦表面に対して配向した2重配向構造をとることが解った。PET摩擦表面では鋼球が滑ることによるせん断力によって分子鎖がC軸配向し、摩擦表面に荷重を加えることにより、ベンゼン環が重なり合うために2重配向結晶化が起こることが推察される。 2.ポリエチレンの構造とトライボロジー 超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の摩擦表面を原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、凹凸情報を得た。その結果、摩擦粉の幅は50-20nm、高さは5-20nmであることが解った。ポリエチレンの単位格子から、摩擦粉に積層されているUHMWPEは10-40個の単位格子であることが解った。 3.ポリブチレン-2,6-ナフタレートのトライボロジー ポリブチレン-2,6-ナフタレート(PBN)の摩擦試験を行い、摩擦表面のカーボンレプリカTEM観察を行った。その結果、母材表面の滑り方向への分子配向が確認された。PETでは非晶部が多く存在し、その部分が摩擦により、配向するが、PBNでは非晶部が少ないため、PET同様に非晶部の配向に加えて、周りの結晶部がそれに伴って乱され、結晶化度が低下することが明らかになった。
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