鎖状高分子を含め、ほとんど全ての分子は分子形状またはセグメントレベルの形状に関し異方的である。この形状異方性は排除体積効果の異方性を生じ、これが高分子凝集系のセグメント配向や混和性に重大な影響を及ぼすと考えられる。本研究はこの問題にはじめて理論的および実験的検討を加えたものである。 まず、格子理論に基づいてこの問題を理論的に研究し、高分子ブレンドが外力による変形を受ける際に、両高分子はその柔軟度に応じて異なる配向を示すとともに、脱混合しやすい場合と混合しやすい場合があることを予測した。 次に、この予測を実験的に検証するため、アニオン、カチオン、ラジカル各リビング重合法により分布の狭いポリスチレン(PS)、ポリ(α-メチルスチレン)(PMS)、ポリビニルメチルエーテル(PVME)、少数のカルバゾール基を有するポリスチレン(PS^*)を合成し、PS/PVME、(PS+PS^*)/PVME、PMS/PVME各系の延伸に伴う配向挙動および混合/脱混合挙動を赤外二色比分光法(IRD)、レーザー光散乱法、偏光蛍光法などにより詳しく調べた。その結果、これら柔軟な高分子からなるブレンド系においては延伸により脱混合が誘起されることが確認された。一方、剛直液晶性分子と柔軟性高分子(エチレンプロピレンゴム)からなるブレンドフィルムでは、延伸誘起相溶化現象が認められた。 以上の結果に基づいて、外力場により変形された高分子混合系の配向および混合挙動は両高分子の分子形状(柔軟度)、したがってエントロピー効果により重大な影響を受けると結論された。
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