今後の宇宙における輸送手段として、比推力が大きく、推進効率(エネルギー変換効率)のすぐれた電気推進が必要になってくる。なかでもアークジェットは、比較的小型でも大きな推力が得られ易いこと、推進剤を化学推進と共用できる、構造が単純であり、信頼性に富むなど利点が多い。しかしながら、そのエネルギー変換効率は、プラズマやその生成源であるアークから電極を含めた周囲の固体壁への熱損失が多いため一般に低い。とくに限られた電力で作動する宇宙推進用アークジェットにとって、この問題は大きく、電源や放熱板の重量の増加を招き、ペイロード重量の低下につながっている。従って、アーク及びプラズマから周囲の固体壁への熱輸送機構を明かにし、熱損失の低減を図ることが今後の研究開発の上で最も重要な課題となる。 本研究の目的は、熱量測定と光学的温度測定によって熱損失のメカニズムを詳細に調べると同時に、これより得られる知見に基づき、電極やノズルの熱損失が少なく、エネルギー変換効率の高いアークジェットを新たに考案し、推力測定などの実験によってその成果を確認することにある。またそれと同時に、電磁流体モデルによる性能解析コードを開発することによって、高推進効率かつ耐久性にすぐれたアークジェットの設計指針を得ることである。このような目的に基づき、平成7年度は以下のことを行った。 アーク及びプラズマから固体壁への熱損失の低減を目的としたアークジェットの設計と製作を行った。これまでのアークジェットと基本的に異なる点はホローカソードを用いたこと、推進剤の供給を2ヵ所から行う点にある。これによって、熱伝導性の異なる2種類の推進剤の導入を可能にし、一方の推進剤をホローカソードから供給してアーク放電の下流への張り出しを容易にし、アークから固体壁への熱損失を低減させる。また、もう一方の推進剤は旋回流となって放電室に導入され低温のガス層をつくりプラズマから固体壁への熱伝導をおさえる。なお製作は学科内工作工事にて行った。 上記のアークジェットを用いて、アークジェットの作動試験並びに作動特性を調べた。電流一電圧特性、作動範囲を作動ガスの流量、配分方法などを変えて調べた。
|