本研究の目的は、熱量測定と光学的温度測定によって、アークジェット内放電部における熱損失のメカニズムを詳細に調べると同時に、これより得られる知見に基づき、電極やノズルへの熱損失が少なく、エネルギー変換効率の高いアークジェットを新たに考察し、推力測定などの実験によってその成果を確認することである。 多分割された陽極ノズルを用いて、陽極への電流分布と熱流束分布えお測定した。また、プラズマの温度分布を測定するために、既存の分光計測システムに平成7年度に購入したCDカメラを組み合わせて、高分解能かつ時間変動を受けない分光計測システムを構築した。これにより、ノズルオリフィス部における半径方向の温度分布を得られ、温度分布とアークの挙動との関連、電極への熱損失との因果関係を調べた。 熱損失や温度計即に加えて、スペースチャンバー内に設置されている推力スタンドを用いて、推力測定の実験を行った。推力測定に関しては、アークジェットの排気からの輻射熱による影響を極力防止するため、推力スタンドの前面に排熱板を設けた。電極への熱損失と推力測定から算出した推進効率(エネルギー変換効率)の関連を調べた。その結果、熱損失の低減は推進効率の増大につながり、推進性能を向上させることがわかった。また、作動パラメータや電極形状の選択によって、アークの陽極への付着点をノズルオリフィス上流から下流へ移動させることが可能となり、これにより電極への熱損失を低減させることが可能となった。
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