地形改変を伴う開発により生じる景観変化は、自然破壊のイメージを与える場合が多く、開発に先立つ景観変化の予測とその影響評価を行うことが、環境アセスメントの中でも重要な課題となってきている。本研究では、景観上問題となることの多い露天採掘跡地を対象として取り上げ、緑化による景観修復効果に関して計量心理学的評価手法を用いて検討した。まず、可視領域図、コンピュータグラフィックスより、露天採掘跡地の状況を予測する方法を検討した。次に、評定尺度法による実験を行い、景観的に許容される緑化割合の定量化を試みた。この緑化基準値をもとに作成した変化刺激を用いてSD法による実験を行い、プロフィール分析、因子分析により景観評価における心理的評価構造を数量的に検討した。さらに、グラスター分析、多次元尺度法による分析を行い、心理的評価構造をパターン化して分類する方法を試みた。 得られた結果を要約すると、次の通りである。 1.評定尺度法による実験結果から、跡地から眺望地点までの距離によって各緑化法の景観修復効果が異なることが明らかになった。また、今回評価対象とした緑化法のうちでは、草本類+木本類による緑化が、最も景観修復効果が高い方法であることが明らかとなった。 2.SD法による実験結果を因子分析により解析したところ、近景域では美観性とテクスチャー、遠景域では美観性と規模生が、景観評価を行う上で重要な因子となっていることが明らかになった。このことから、採掘跡地とそれを眺望する地点との距離によって、採用する緑化法を検討する必要があることが示唆された。 3.プロフィール分析、クラスター分析および多次元尺度法による分析の結果、景観評価構造をパターン化して分類することが可能となり、複雑な心理的評価要因を視覚的に把握できるようになった。 これらの成果は、露天採掘跡地の景観評価の方法に1つの指針を示したものであり、今後、景観修復効果に優れた緑化法を開発する上で、重要な知見を与えるものといえる。
|