低分子化合物が存在する高温高圧水系の反応機能と溶媒機能を明らかにする目的で、有機化合物の水溶液に対して誘電率測定を行い、その溶媒極性について検討すると共に、低分子有機化合物の水熱条件下における反応性/安定性について調べた。前者においては、比較として純アルコール及び、水または有機化合物を添加した超臨界二酸化炭素混合流体の溶媒極性についても検討した。本研究で得られた結果を要約すると、下記の通りである。(1)C_1〜C_3アルコール、C_4ジオール、環状アミド、ケトン、スルフォキシド等の水溶液及び、2-メチル置換-1-アルカノールとアルカン-2-オールの純アルコールに対して、300MPaまでの圧力範囲で誘電率測定を行い、誘電率に対する圧力効果、溶媒和に寄与する溶媒性質の組成依存性等について考察した;(2)密度と誘電率の同時測定が可能な高温高圧用キャパシタンスセルを試作し、アルコール水溶液について、423K、100MPaまでの範囲で密度測定を行った。(3)5種類の共溶媒を添加した、超臨界二酸化炭素混合流体の30MPaまでの誘電的性質を明らかにした。(4)573〜773K、20〜40MPaの条件下で、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、カルボン酸、塩基の14種類の化合物について流通式管型反応装置を使用して、無酸素下での水熱分解反応の見かけの1次速度定数を決定した;(5)アルコールの反応の活性化エネルギー値は酸素存在下の場合に比べて小さく、反応の活性化体積と活性化エントロピーの間に直線関係が見られることから、イオン反応であることが推定された;(6)アルデヒドはCannizzaro反応を起こし、アルコールを生成する;(7)アセトンとピリジンは773K、30MPaでもほとんど反応せず、安定である。
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