研究概要 |
本年度の研究は、本補助金が追加配分枠で配当されたため、十分な時間がなく、レーザー照射を含めた本格的な実験研究を実施するに至っていない。しかし、すでにZn_<1-x>Mn_xTe(x=0.3,0.35,0.40,0.45,0.50)についての研究を本学、科学計測研究所の岡泰夫教授の協力の下に開始しており、レーザー照射する以前の半磁性半導体について測定を始めている。研究には超伝導素子を用いた磁気測定(SQUID)、x線回折、中性子回折、中性子散乱を用いている。Zn_<1-x>Mn_xTeはx<0.6において50K以下の温度範囲で冷却に伴って常磁性相からスピングラス相へと転移する。この転移温度はMn濃度の上昇に伴って上昇することが知られている。今期はこの相転移によってMnの磁気モーメントがどのような巨視的な動きを見せるのかという点に焦点を絞って研究した。比較的試料の得易かったZn_<0.6>Mn_<0.4>Te等について磁気測定を行って転移温度を決定し、転移温度の直上と以下とで中性子散乱測定を行った。測定には約0.5ccの粉末を用い、飛行時間型冷中性子分光器、AGNES、を用いて3meV以下のエネルギー領域で100μeVのエネルギー分解能で測定した。用いた冷中性子線の波長は4.22Aであり、波数領域2π/d=1.49〜2.38A^<-1>で測定した。測定温度は11K、40K及び100Kの各温度である。試料は20K以下でスピングラス相になることが磁化測定の結果、分かった。この転移によりMnイオンの磁気的非干渉性散乱強度が変化する事を期待した。またスピングラス相ではスピン波が存在する他、局所的で低いエネルギー固有値を持ったな磁気励起が発生する可能性がある。現在実験の途中であるが、スピングラス相に約0.8meVのエネルギー値の幅の比較的広いピークが現れる事に気づいている。次回(3月)の測定では単結晶試料を用い、このピークの現れる波数領域を特定する計画である。
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