研究概要 |
表題の半磁性半導体は磁性イオンを含む混晶化合物半導体であり、既存の化合物半導体の金属イオンを任意の濃度の磁性金属イオンと置換することで半導体でありながら、磁性を示すものである。本研究はII-VI族化合物半導体であるZnSe, CdTe, ZnTeおよびHgTe等に注目してZn, CdあるいはHg等をMnで部分置換した試料を作成し、電気伝導性、帯磁率、磁気クラスタの構造と安定性について調べ、さらに光照射によって励起された磁性イオンの示す磁気的電気的応答を捕らえることが目的である。特に光励起による磁気的応答を中性子散乱等によって研究しようとした。本補助金は昨年度後半に追加認定された関係上備品のアルゴンレーザの納入が遅れたが、これを用いて磁気励起クラスターによる電気伝導性の温度依存性に関する実験とマグノン測定用のファブリーペロ-干渉計の整備を行った。本年度は(Zn_<1-x>Mn_x)Te、x=0.3-0.45を用いて光励起する前の半磁性半導体について詳しく研究することにした。粉末x線回折、粉末中性子回折および単結晶中性子回折実験を行って結晶の均一性、構造相転移の有無等を調べた。また粉末試料を用いて4.2Kから300Kまでの範囲で帯磁率測定を行った。帯磁率測定からスピングラス転移点を決め、中性子回折実験によって磁気クラスターの大きさと磁気構造を決めた。単結晶中性子回折実験を原研3号炉の2台の多連装式中性子回折装置HERMESとHRPDを用いて実施した。実験の結果、(Zn_<1-x>Mn_x)Te、x=0.43の磁気クラスターの大きさと濃度は温度によって変わるものの、スピングラス転移温度以上でも以下でも存在し、基本的にはCd_<1-x>Mn_xTe系と同様にtype-IIIの構造を持つ事が示された。また同時にtype-Iの磁気的相関も強い事が分かった。これはCd_<1-x>Mn_xTe系と異なる点である。零磁場下と5T(テスラ)の磁場下での実験を行った結果、type-IIIの磁気相関はほぼ変化しないものの、type-Iの磁気相関には外部磁場による低下が起きた。冷中性子散乱実験を10Kから室温の範囲で行った所、スピングラス転移点付近に臨界散乱現象が現れた。
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