本研究は、通信用長波長半導体レーザの究極的低電流動作を実現することを目的として、活性媒質の高利得化の観点から歪量子細線の形成とレーザ特性の評価を行い、レーザ共振器の低損失極微構造化の観点から、新たに考案した多重極微共振器構造レーザの理論解析と試作を行い、以下に挙げる成果を得た。 1)電子線リソグラフィーと2回の有機金属気相成長法によって、周期70nm、幅20-30nmの歪量子細線を活性層とするGaInAs/GaInAsP/InP歪量子細線レーザを試作し、そのしきい値電流、微分量子効率、および内部量子効率の温度特性測定を行い、同一ウェーハ上に作製した歪量子薄膜レーザの特性との比較を行った結果、温度200K以下では、両者の内部量子効率には大差は無く、歪量子細線レーザの方が低しきい値電流かつ高効率動作していることを明かにすると共に、温度上昇による歪量子細線レーザの急激な特性劣化が主に量子細線構造の界面での非発光成分の温度特性に起因していることを明らかにした。 2)多重極微共振器構造レーザの静特性および変調時の光パルス時間遅れ(スキュー)の理論解析を行い、低電流動作のための共振器構造を明らかにすると共に、光インタコネクションに要求されるしきい値電流およびバイアス電流を満足させるための共振器構造の設計指針を明らかにした。 3)GaInAs/GaInAsP/InP歪量子薄膜を活性層とする多重極微共振器構造レーザを、湿式化学エッチングによる極微溝形成により試作し、全面電極構造で178A/cm^2の低電流密度動作を実現した。 4)多重極微共振器構造レーザに用いる高反射率端面を形成するための溝形成方位を明らかにすると共に、ドライエッチング法を併用することによる高アスペクト比の極微垂直溝(幅0.45μm)を形成することに成功した。
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