本研究では、気相法によって従来よりも低温で緻密な炭素材料薄膜を形成することを目的とする。三フッ化窒素をフッ素源として用い、これを熱分解あるいはプラズマ分解することによって活性フッ素を生成させ、この活性フッ素によって炭化水素の水素引き抜き反応を行うことによって、炭化水素の熱分解反応を容易にし、炭素薄膜形成の低温かを狙っている。また、得られた低結晶性の緻密炭素薄膜を用いてリチウム二次電池を作製し、高エネルギー密度のリチウム二次電池負極材料として期待されている低結晶性の炭素材料への電気化学的リチウム挿入脱離機構を解明する。 本年度は、炭素薄膜の形成条件を調べるために、炭素源に芳香族のベンゼンを、フッ素源として三フッ化窒素を用いて、これをプラズマで活性化することによって炭素薄膜の形成を行った。プラズマで活性化した場合には炭素薄膜は400℃という低温でも形成することができ、またプラズマで活性化しないときよりも成膜速度は速かった。これは、加熱だけでなくグロー放電プラズマでによっても三フッ化窒素の活性化が起こり、これにより生成したフッ素ラジカルがベンゼンの水素を引き抜くために、気相中での炭化反応が加速されたものと考えられる。 また、購入した四重極質量分析計を反応装置に直結した装置を作製し、この装置を用いてプラズマ中の活性種を検出したところ、ベンゼンの水素がフッ素によって置換された化学種が検出された。従って、このことはプラズマによって活性化されたフッ素によってベンゼンの水素を引き抜くことが可能であることを示し、上記の反応機構が裏付けられた。
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