超臨界水中でのバイオマスの分解・化学原料回収プロセスの開発を最終的目的とし、超臨界水中でのセルロース分解反応について機構論的または速度論的研究を行った。まず始めに、セルロース水スラリーを連続供給できるスラリーポンプを独自に開発した。それを用いることでセルロースの超臨界水中での分解反応を詳細に検討できるようになった。超臨界水中では、低温下での反応と比較して、高い加水分解生成物収率が得られることがわかった。また、セルロースの加水分解反応速度を広い温度範囲で評価したところ、臨界点以上で急速に反応速度が増大することがわかった。グルコースの反応速度は、低温下では常にセルロースの加水分解速度よりも高く、そのため加水分解によりグルコースが生成してもさらにその熱分解が生じるため、高い加水分解生成物収率が得られない。しかし超臨界水中では、セルロース加水分解速度がグルコース分解速度よりも高くなった。これが高い加水分解生成物収率が得られた原因であることがわかった。次に、より詳細な検討を行うために、グルコース、グライコールアルデヒド、ダイヒドロキシアセトン、セロビオース、セロトライオース、セロペンタオース等のモデル化合物を用いた実験も行った。これらの実験を通して、セルロース分解の主反応経路を明らかにできた。また明らかとなったそれぞれの反応経路の反応速度も評価した。得られた反応速度とモンテカルロ法を用いることで、セルロース分解により時々刻々得られる生成物の変化を記述することに成功した。
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