本研究においては、同一結晶構造内に物理的・化学的に異質な構成要素を原子・分子レベルで積み木を重ねるように組み合わせることを可能にするソフト化学的な手法を用い、多彩な電気・磁気的性質を持つ遷移金属層状化合物をホストとするインターカレーション化合物を合成し、ホストとゲストが異なる機能を分担するような機能性材料の合成を試みる。 前年度に行ったブルーモリブデンブロンズ、K_<0.28>MoO_3(BMB)、に引き続いて、本年度は銅モリブデンブロンズ、Cu_xMoO_3(CMB)、についての研究を行った。CMBは金属銅と三酸化モリブデンを石英管中に真空封入し、加熱して合成し、これをそのままあるいはスピルオーバー法により水素化して各種の有機塩基と反応させた。 BMBと同様、水素化によりMoの原子価は大きく減少した。水素化したCMBは、BMBの場合と比較すると短時間で元のCMBに戻ることがわかった。BMBの場合は水素化した後水和させることにより初めてn-アルキルアミンなどの有機塩基をインターカレートしたが、CMBは水素化の有無に関わらず有機塩基と反応してインターカレーション化合物を生成した。また、BMBにはpKaが小さくてインターカレートできなかったピリジンも、インターカレートした。これは、層間の銅イオンがアミン基と錯イオンを形成しやすいことによるものと考えられる。n-アルキルアミンのインターカレートにより層間距離は大きく増加し、その増加の割合より層間で2層になったアルキル鎖が層に対して約50°傾いて配列していると考えられる。このことより、層間でアルキルアミン分子はBMBの場合と同様の配列をしていると考えられる。ピリンジンインターカレーション化合物の電気伝導度は、現在測定中である。
|