本研究では、同一結晶構造内に異質な構成要素を原子・分子レベルで組み合わせることを可能にするソフト化学的な手法を用い、遷移金属層状化合物をホストするインターカレーション化合物を合成しインターカレーション挙動の検討と機能性材料の合成を試みた。 ブルーモリブデンブロンズおよび銅モリブデンブロンズは、類似した層状構造にも関わらず両者では有機塩基のインターカレーションに対する挙動は大きく異なることを見出した。前者はインターカレーションに先立つ水素化と水和が必要であったが、後者はイオン交換でもない酸・塩基反応でもない機構によりインターカレーションが行われた。また、両者とも低次元性の伝導を示す代表的な化合物であるが、インターカレーションにより伝導度が大きく減少した。 VOPO_42H_2Oにはアニリンが重合しながらインターカレーションし、層間で導電性高分子が合成できた。リン酸アルミニウムおよびリン酸ジルコニウムの有機誘導体を種々な方法で合成し、多孔性の無機-有機複合体を得た。合成時にアニリンを共インターカレーションすることにより、より大きな比表面積が得られることがわかった。 HTaWO_6nH_2Oに酸素欠陥を導入することによりH_<1-y>TaWO_<6-y/2>nH_2Oを合成し、層の持つ電荷密度を広い範囲で制御できた。これにより、同じ基本構造で電荷密度を変化させたときの有機塩基のインターカレーション挙動を系統的に検討することが可能になった。その他の層状化合物を中心とした遷移金属酸化物のディインターカレーションおよびイオン交換特性、およびハイドロタルサイト様化合物の陰イオン交換特性につき検討を加えた。 本研究により、無機-有機複合体の合成に対する水素化と共インターカレーションの有効性が明らかとなった。
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