炭酸プロバルギルエステルのカルボニル化反応で生成するアレンエステルは、反応性の高いアレンSP炭素を有するため、合成系に興味深い反応を提供する。我々は、このアレンアステルの高い反応性を活用して、更に付加価値の高い化学変換を実現すべく次の反応をデザインした。即ち、ドミノ型カルボニル化/Diels-Alder反応である。これらの反応を合成化学的な応用を念頭に置いて検討した成果について報告する。 アセチレン水素の替わりにビニル基を有する炭酸プロバルギルエステルをカルボニル化すると、α位にビニル基を持つアレンエステルが生成する。このアレエステルは電子密度の低い共役ジエンと見なすことができ、電子密度の高いジエノフィルとのDiels-Alder反応を誘起する可能性がある。そこで電子密度の高いジエノフィルとしてのメチルエノールエーテルを持つ炭酸プロバルギルエステテルのカルボニル化/分子内Diels-Alder反応を検討した。有望な成果がえられたことから、この反応を鍵工程とするビタミンD_3誘導体のCD環部合成をデザインし、各々の合成工程の可否を検証した。その過程で、最近、免疫抑制作用が報告され注目を集めている。21-エビ型のビタミンD_3誘導体について、dーメントールを出発物質として側鎖部分も含めたCD環の炭素骨格の構築に成功した。現在は、このドミノ型カルボニル化/Diels-Alder反応の最適条件の検討と、併せてCD環シントンへの変換について試みている。
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