生体の持つ高度な機能を人工的に発現させるためには、生体膜に類似した分子の配向、配列の制御や分子配列の高次構造が重要である。この様な目的に適した分子組織体構築法の優れた手法として、Langmuir-Blodgett(LB)法が注目されている。本研究では、種々の分子情報を電気的信号や光信号などの物理的情報に変換する生体膜類似の超分子組織体を分子設計することを目的としている。本基盤研究を通して、以下の成果が得られた。 平成7年度 1)N-アルキルアクリルアミドLB膜の詳細な分子配向決定を行った結果、親水部のアクリルアミドとそ水部のアルキル鎖の結合軸を含むそれぞれの平面が累積方向に対して垂直に存在する二軸配向をとっていることが初めて明らかにされた。 2)新規に二本鎖を有するアルキルアクリルアミド類を合成し、その単分子膜挙動を検討した結果、生体膜同様な液晶-ゲル相転移を示すことが明らかとなった。 平成8年度 3)フェロセン誘導体(Fc)やルテニウムビピリジン錯体(Ru)を高分子LB膜中に導入して新規レドックス高分子LB膜を作成した。FcとRuの酸化還元電位が異なることを利用してヘテロ積層レドックス高分子LB膜を作成し、電気化学的な分子素子の試作を試みた。その結果、外膜のFcLB膜を内膜のRuLB膜で制御可能なことが明らかとなった。 4)適当な電子ドナー存在下、RuLB膜に光照射すると光アノード電流が観測され、またそのアクションスペクトルからRuのMLCT吸収バンドの波長光で光電流が発生していることが明らかとなった。これらの結果よりRu(II)が光励起され、ドナーから電子を奪う酸化的光誘起電子移動反応が起こり、Ru(I)が生成し、これが電極で酸化されることでアノード電流が発生したものと解釈できる。 5)高分子LB膜中に光架橋基を導入して二次元光架橋反応に基づく分子パタ-ニングを可能にした。また、AFM観察から二分子層LB膜でフォトパタ-ニングが可能なことが明らかとなった。
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