研究概要 |
ノシバの外植体(種子)から植物体再分化能を有する培養細胞“embryogenic callus"を高頻度に誘導する方法を開発した.すなわち従来のオーキシン(2,4-D)を加えたカルス誘導培地に、更にサイトカイニン(BA or TDA)、チアミン、リボフラビン、α-ケトグルタル酸を添加することにより、誘導率を従来の1-2%から最高28%にまで高めることができた.これらの多数のembryogenic callusを液体振盪培養に移し、選抜を繰り返すことにより、長期間、再分化能を維持したままのsuspension培養系を確立した.ノシバ及びベントグラスの培養系を用い、マーカー(bar)及び殺虫タンパク(bt)遺伝子のco-transformationを試みた.遺伝子導入法としてプロトプラストを用いたエレクトロポレーション法に加え、新たに開発された、intactな培養細胞に直接導入可能な“particle-gun"法を試みた結果、エレクトロポレーション法により多数のビアラフォス抵抗性形質転換ベントグラスが得られ、約25%の確率でbt遺伝子も同時に導入されていた.particle-gun法では、gusマーカー遺伝子を用いたtransient assayにより導入条件の最適化を図った後、intact cellにstableな遺伝子導入を試みたが、現在のところ導入効率は低く、数個体が得られた段階である.bt遺伝子の導入が確認された個体の葉を用いて芝草の重要害虫である鱗し目ガ(シバツトガ、スジキリヨトウガ)の幼虫による食害テストを行ったが、現在のところ、今回用いたwild-typeの遺伝子では十分な抵抗性を発現する個体が認められていない.微生物由来であるbt遺伝子のコドンは植物細胞中での転写、翻訳がうまく行われない可能性があり、現在、植物細胞中で高発現が期待される改変遺伝子の合成を試みており、合成後ベクターを構築し、再導入を試みる予定である.
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