塩ストレスのイネの遺伝的応答機構の解析

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07456003
• 研究種目: 一般研究(B)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 内宮 博文 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授 (50142229)
• キーワード: 塩ストレス / ストレス耐性 / イネ / エネルギー代謝 / 通気組織 / プロテアソーム / タンパク質分解

研究概要

平成7年度は、まず、エネルギー代謝に関連して、塩ストレスによって発現が抑えられるピルビン酸脱炭酸酵素のcDNAを単離し、その構造を解析した。また、解糖系・アルコール発酵といったATP合成系のみならず、ATPの量比を調節するアデニル酸キナーゼの活性についても塩ストレス下で測定した。その結果、イネの根において、塩ストレスによる活性の増加が観察された。ところが、塩ストレス耐性の育種lineでは活性の上昇が見られなかった。これらの結果は、塩ストレスによるエネルギー代謝の変化が、ストレス耐性と密接に関連していることを示唆している。また、IR系統の育種lineを用いることにより、塩ストレス耐性と酵素活性との相関を遺伝学的にアプローチする方向性を示すことができた。
一方、イネの根における通気組織の形成過程を詳細に解析した。その結果、塩ストレスによる通気組織形成の阻害を組織レベルで観察することに成功した。また、ユビキチン化されたタンパク質の分解に働くプロテアソームの発現量を解析したところ、塩ストレスを与えた根において発現量の減少が見られた。以上の結果から、塩ストレス下におけるタンパク質分解と通気組織形成との間に分子レベルの相関関係が示唆された。
以上のように、平成7年度はほぼ当初の研究計画を遂行でき、平成8年度に向けての基礎的な知見を得ることができた。

研究成果

• [文献書誌] Umeda, M: "Expressed sequence tags from cultured cells of rice (Oryza sativa L.) under stressed conditions:analysis of transcripts of genes engagedin ATP-generating pathways." Plant Molecular Biology. 25. 469-478 (1994)
• [文献書誌] Umeda, M: "Differential transcript level genes associated with glycolysis and alcohol fermentation in rice plant (Oryza sativa L.) under submergence stress." Plant Physiology. 106. 1015-1022 (1994)
• [文献書誌] Yano, A.: "Expression of functional proteins of cDNA encoding rice uncleoside diphosphate kinase (NDK) in Escherichia coli and organ related alteration of NDK activities during rice seed germination" Plant Molecular Biology. 27. 1053-1058 (1995)
• [文献書誌] Kawai,M.: "Tissue specific localization of adenylate kinase in rice (Oryza sativa L.) plants." Journal of Plant Physiology. 146. 239-243 (1995)
• [文献書誌] Kawai,M.: "Biochemical properties of rice adenylate kinase and subcellular location in plant cells." Plant Molecular Biology. 27. 943-951 (1995)
• [文献書誌] Liu,J.: "Analysis of randomly isolated cDNAs from developing endosperm of rice (Oryza sativa L.) : Evaluation of expressed sequence tags,and expression levels of mRNAs." Plant Molecular Biology. 29. 685-689 (1995)