研究概要 |
嫌気条件下では、ピルビン酸を基質として、最終的にエタノールに至る発酵と、乳酸に至る乳酸発酵との2つの経路が働く。イネを用いて発酵の最終段階に働くアルコール脱水素酵素(ADH)と乳酸脱水素酵素(LDH)の遺伝子発現について解析した。 1)ADHについて (1)イネ発芽種子のADH活性には品種間差異が会ったが、全ての品種で好気条件より嫌気条件で活性が高かった。またADH阻害剤(4-メチルピラゾル)でADH活性を抑えると、エタノール量の低下とともに子葉鞘の伸長が阻害された。 (2)ADH欠失突然変異体の解糖系における生理的特性を調べた。その結果、予想されるアセトアルデヒドの蓄積はなかったが、フルクトース1,6二リン酸の蓄積が見られ、これはADH活性の低下による補酵素NADの低下に原因があり、律速段階になっていると推定された。また、冠水条件でこの突然変異体を発芽させると、発芽種子中のグルコースの低下が見られ、これはデンプン分解過程のα-グルコシダーゼ活性の低下に起因することが明らかになった。 2)LDHについて (1)嫌気条件下においたイネ幼植物体からRNAを抽出し、ノーザンハイブルダイゼーションによって、LDH遺伝子の発現が嫌気条件によって誘導されることを再確認した。 (2)プライマーイクステンション法により、イネLDH遺伝子の転写開始点を決定した。
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