イネを用いて発酵の最終段階に働くアルコール脱水素酵素(ADH)と乳酸脱水素酵素(LDH)の遺伝子発現および、嫌気発芽条件におけるイネの生育について検討した。 1.ADHについて (1)ADH欠失突然変異体の冠水耐性が対照品種と比較して劣ることから、ADHは発芽時だけではなく、冠水耐性にも重要であることを明らかにした。 (2)ADH欠失突然変異体においても、微量のADH2の活性が確認でき、しかもそれは嫌気条件で発芽した根に局在していた。 2.LDHについて (1)LDH遺伝子の発現は嫌気条件によって誘導されるが、この誘導はオオムギと比較して一過的であり、その結果乳酸の蓄積による細胞の酸性化が回避され、イネの嫌気ストレス耐性の一因となっていることが推察された。 3.嫌気発芽条件におけるイネの生育について (1)約60の陸稲の育成品種を用いて、冠水条件で発芽試験を行い、日本晴をコントロールとして生育について調査した。陸稲品種の中に日本晴より子葉鞘の伸張のよいものがあった。 (2)4品種を用いて、グルコース水溶液、ショ糖水溶液内で発芽試験を行った。子葉鞘の伸び(長さ)は特に差がみられなかったが、子葉鞘の形態に以上が見られる場合があった。また、水溶液中では見られない根の伸張が見られた。
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