研究概要 |
本年度は,イネを用いて,異なる乾燥条件が,根の溶存ガス排除機能に与える影響を調査した.耐乾燥性品種と乾燥感受性品種を含むイネ3品種を供試し,バ-ミキュライトを充填したポット栽培において,灌水頻度を変えることにより乾燥過程を変えて育成させた.それぞれの処理区から7〜8cmの長さの根を採取し,イオン排除機能解析用に製作した既設の加圧式根出液採取装置に1本ずつ取り付け,各々の根の表面にN_2ガスで飽和した蒸留水を加圧して,中心柱からの出液を採取し,培地中と蒸留水中の溶存ガス濃度を比較した. その結果,全ての品種および処理区の個体の根において,出液中の溶存ガス濃度が減少することを認め,根の組織を通って導管へ至るまでの過程で,溶存ガスが排除されていることを再確認した.また,乾燥感受性品種以外の品種では,乾燥処理下で発生生長した根において,溶存ガス排除効率がより高まることを認めたが,乾燥感受性品種では排除効率自体は高いものの,乾燥処理による排除率の変化は見られなかった. 現在は,気体排除の実験に供試したイネの,葉身,葉鞘および根におけるセルロース,リグニンおよびシリカの含有率の測定と,落射蛍光顕微鏡を用いた根の内部形態の観察を行ない、気体排除機能との関係を検討中である.また,ガスクロマトグラフを用いた溶存ガス成分別の排除機能の調査については,機器の調整に時間を要したが,試運転を終え,極微量の液体に溶存している気体中のN_2およびO_2の定量が可能となった.
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