研究概要 |
イネ品種江曽島糯(乾燥感受性品種)およびDular(耐乾燥性品種)を供試して,噴霧栽培を行い,根部における異なる水分条件が溶存ガス排除機能に及ぼす影響,および溶存ガス排除機能と根の内部形態との関連について調査した.噴霧栽培は栽培装置を作製して行った.電動噴霧器を用いて下方から木村氏B液を6.5ml/sで根に噴霧し,生育させた.実験は2回行い,噴霧/停止時間を30/300秒,および10/600秒とした.噴霧栽培を行った個体の根を採取し,水耕栽培した個体の根と溶存ガス排除率を比較した.また,実験に供試した根の根端から5cmの横断切片を硫酸ベルベリンおよびアニリンブルーで染色し,蛍光顕微鏡下で観察した. その結果,両品種とも噴霧栽培した個体の根における溶存ガス排除率は高く,水耕栽培の根に比較して,江曽島糯で15%、Dularで10%の排除率の増加が認められた.また,蛍光顕微鏡による観察では,皮層内厚壁組織および内皮のカスパリ-帯の蛍光が,噴霧栽培を行った個体の根で,より強かったことから,根の形態および組成と,溶存ガス排除機能との間には密接な関係があることが示唆された. 次に,イネ品種アキヒカリを用いて,気体種別の溶存ガス排除機能の差異を検討した.窒素ガスまたは酸素ガスを通気した蒸留水を培地とし,基部を1cm残し,茎葉部を切除した幼植物の切断面から出液を採取し,培地中と出液中の溶存ガス濃度を比較し,ガスクロマトグラフを用いてその組成を測定した. その結果,窒素ガスを用いた場合と比較して,酸素ガスを用いた場合には,ガス排除率は18%増加し,また,培地中と出液中の溶存ガスの組成から,通気に使用したガスが排除されていることが明らかになり,酸素の選択的排除の可能性が示唆された.
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