研究概要 |
植物の水吸収に際して、導管中の水には負圧がかかり、乾燥条件では、導管液中の溶存気体が気泡となって発生し、導管を塞ぎ、水吸収を妨げる。本研究では、植物の根に溶存気体を除去する機能があることを実証し、この機能に関わる要因と耐乾燥性との関係,および気体種と気体排除率との関係について検討した。 イネおよびオオムギの1本の根に培地溶液を加圧し,培地と根の導管液の出液中の溶存気体量を比較したところ,出液中の溶存気体濃度が減少することが認められ,根の表皮から導管へ至るまでの遇程で,溶存気体が排除されていることが明らかになった. また,異なる水分条件で生育したイネ品種江曽島糯(乾燥感受性品種)およびDular(耐乾燥性品種)の溶存気体排除機能を調査した結果,両品種とも噴霧栽培した個体の根における溶存気体排除率は高く,乾燥ストレスによってその機能が高まることが認められた.また,蛍光顕微鏡による観察では,皮層内厚壁組織および内皮のカスパリ-帯の蛍光が,噴霧栽培を行った個体の根でより強まり,根の形態および組成と溶存気体排除機能との間には密接な関係があることが示唆された. さらに,気体種別の溶存気体排除機能の差異を検討したところ,窒素ガスを用いた場合と比較して,酸素ガスを用いた場合には,気体排除率は18%増加し,また,培地中と出液中の溶存気体の組成から,通気に使用した気体が排除されていることが明らかになり,酸素の選択的排除の可能性が示唆された.
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