研究概要 |
1.富山県内の栽培バラやノイバラの腫瘍から、約60菌株のアグロバクテリウム属菌を分離し、TPU(Toyama Prefectural University)の菌株名を与え保存した。 2.分離されたTPU-50,-54,-55,-57菌株は、細菌学的手法により、それらの分類学的所属を検討したところ、アグロバクテリウム チュメファシエンスでバイオバ-2と同定された。しかし、他の菌株は、生物学的性質やT-DNA型がアグロバクテリウム属菌に類似しているが、確定は出来なかった。 3.サザンハイブリダイゼションの手法により、TPU菌株のT-DNA型について検討を進めたところ、分離されたTPU菌株のT-DNA型は、それぞれ特徴のある5型に分類できた。しかも、これらのT-DNA型は、標品の外国菌株のNIAES1724とA13型と全く異なることが明らかになった。オピン型は、分離されたTPU菌株の大部分において、ノパリン、アグロピン、ミキモピンが同定された。一方、TPU菌株には、rolBとrolCの遺伝子が存在することも明らかになった。 4.TPU菌株をトマトやキュウリの下胚軸に接種したところ、腫瘍、カルス、不定根(毛状根)が胚軸の接種部分に発生した。これら形質転換体組織中のサイトカイニンやアブシジン酸を分析したところ、組織中の含有量は非接種組織に比べ著しく高くなることが明らかになった。この事は、高サイトカイン組織が、TPUの接種により作出できることを示唆している。 5.TPU-57と-58菌株を種子繁殖用サツマイモの胚軸に接種し、得られたカルスを再分化培地で培養したところ、不定芽、不定根ならびに再生個体が認められた。これらの結果から、高サイトカイン作物の作出には、TPU菌株のベクター系を利用すれば極めて有利であることが明らかになった。
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