園芸作物遺伝子源の凍結保存技術を確立することを目的として、個体再生能をもつ組織の凍結生存性について検討した。 1.サルナシ培養体シュートから切り出した側芽の凍結生存性について調べた結果は次のように要約される。(1)凍結に先立ち、側芽に5℃で4週間低温馴化処理を行い、続いて0℃で2週間低温馴化処理を行ってから凍結すると、融解後の側芽の生存率は向上した。(2)糖を添加した培地で側芽を前培養した場合、凍結・融解後の生存率が高くなった。また、前培養培地にグリセリン0.1〜0.4Mを添加すると効果が一層大きくなった。(3)凍結に先立って、凍結媒液中での側芽浸漬処理を行うが、この場合、媒液に添加する至適DMSO濃度は15%、至適浸漬時間は1時間、至適浸漬温度は0℃であった。(4)低温馴化処理した側芽は、DMSO15%にグリセリン8Mまたは12Mを組み合わせて添加した凍結媒液中に60分間浸漬し、次に-30℃まで緩慢に冷却したのち液体窒素(-196℃)に浸漬し、2時間静置したのち、急速融解して培養すると、50%の生存率が得られた。 2.北海道恵庭市の山地に自生しているサルナシの側芽を1995年12月下旬に採取し、その凍結生存性を向上させる条件について検討した。(1)凍結過程の前に行う凍結媒液処理については、DMSO15%を含む媒液を用いて、0℃の条件下で30〜60分間行うのが適当であり、処理温度が高くなるにしたがい凍結・融解後の側芽の生存率は低くなった。(2)側芽をグリセリン8MおよびDMSO15%を含む凍結媒液中に浸漬し、-30℃まで予備緩慢凍結を行ったのち、液体窒素(-196℃)に浸漬すると、凍結・融解後に37%の生存率を得ることが可能となった。
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