研究概要 |
1.新たに収集した材料を含め,合計40サンプルについて下記の実験を行った.内訳は、園芸品種または選抜系統(エゾリンドウとリンドウ由来)18,エゾリンドウに自生系統14,欧州からの導入種8である. 花色素分析 1)生花弁の花色を,日本園芸植物色票を用いて調査し,色差計による測定を行ったその結果,前者では,色相範囲は青色と赤色の間であった.後者では,L*a*b(1976)の表色方法を用い,供試材料の色相は,青色系はh=310〜330°,桃色系はh=330〜335°のそれぞれ狭い範囲に分布し,彩度は広範囲に及んだ.2)アントシアニン組成の調査は,アントシアニジンの分析結果に基づいて,クロマトグラム上のピーク(相対量が10%以上)構成の比較により行った.その結果,供試材料は4つのタイプに分けられた.さらに,花色との関連をみると、青色系はデルフィニジン系色素のみの,またはデルフィニジン系とシアニジン系の両色素のアントシアニン組成からなる3タイプ,桃色系の材料はシアニジン系色素からなる1タイプであった.3)エゾリンドウの自生植物中に,桃色系の1系統が見出された.また,エゾリンドウ由来の青色系の1品種はほかのエゾリンドウとは異なるアントシアニン組成を示した.4)花色素の遺伝様相の調査は,青色系,桃色系および白色系の系統または品種を供試し,自殖および各色の系統間で交雑を行った.その結果得られた種子は播種し、後代植物を育成中である. 細胞学的調査 花粉稔性の調査を行った.エゾリンドウの自生系統は2系統でやや低い稔性の個体を含み,そのほかは正常な稔性を示した.エゾリンドウとリンドウの選抜系統では50〜96%の範囲で個体により異なったが,低い数値は栽培環境の影響とも考えられた.園芸品種では種間雑種由来品種がかなり低い花粉稔性であった.欧州からの導入種は,低い,中程度,正常の数値を示した.
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