成型苗の低温貯蔵法について、好適貯蔵条件を模索・検討し、苗の中長期保存法を確立する目的で、一連の試験を行った。貯蔵方法の基本的考え方については、光補償点程度の弱光を貯蔵中に照射する方法も提案・試験されているが、現段階でのコストなど実用的な見地から、暗黒下で貯蔵する方式を採用した。 暗黒下での貯蔵については、これまでも、各種花卉苗の他、キャベツ、ブロッコリー等の野菜の成型苗で試験され、一部実用化されているが、本試験では、成型苗の比率が高く苗の貯蔵に対する要望は多いが、葉が軟弱でこれまで低温貯蔵は困難とされていたレタスの成型苗の低温貯蔵法の検討を行った。その結果、ポリエチレン製のバッグで密閉し、2〜5℃の低温下で貯蔵することで、成型苗の3〜4週間の実用的貯蔵が可能であることが判明した。本方式は、生産者やJA等が保有する既存の保冷庫等の施設を有効利用でき、資材費も安価な方式であるため、実用的価値は極めて高いものと思われる。さらに、貯蔵バッグ内に炭酸ガスを封入し、CA貯蔵を導入することで、貯蔵苗の品質が向上し、貯蔵期間もさらに延長できることが判明した。今後は、他の野菜の成型苗に対しても、同様の方法が有効であるか確認する価値がある。 また、苗単価の高いトマト、キュウリ等の果菜類の苗生産を工場的生産施設で、効率よく行う目的で、照明サイクルについて評価を行った。これまでレタス苗については、暗期時間を短縮することで苗の生長速度をほぼ倍増することが可能で、苗の生産費に占めるランニングコストは同じままであるが、施設償却費が半減できることが分かっていたが、本方式をトマト、キュウリに応用すると暗期時間が6時間以下になると苗に生理障害が発生し実用下が困難であった。今後は、生理障害の回避方法の検討を行い果菜類での効率的苗生産方式を検討したい。
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