研究概要 |
結球性野菜は短縮茎を持ち,その頂部で葉原基を次々に分化し,やがて内側の葉が外側の葉によって遮光されるようになり,球を形成する。球葉は,その外側の数枚を除き,光合成を行うことができないので,外葉で同化された光合成産物あるいは非光合成器官に一時的に貯蔵された糖が球葉に転流され,その生長に利用されると考えられている。ところで,レタスはキク科の植物であり,フルクタンを蓄積する可能性がある。特に生長の過程で次第に肥大する茎はフルクタンの蓄積部位になっている可能性が高いと思われるが,茎の生長と葉の生長との関連,茎に貯蔵された炭水化物の球葉への転流の可能性についてはこれまでほとんど考慮されてこなかった。そこで,レタスの生長に伴う葉,茎の乾物重の変化,並びにそれらの部位における炭水化物濃度の変化を調査し,レタスの茎に蓄積された炭水化物の分解,利用と球葉の生長との関連を明らかにしようとした。クリスプヘッド型レタス‘極早生シスコ'を20l容のポットで栽培し,葉と茎のグルコース,フルクトース,スクロース,フルクタン濃度の経時変化を酵素法と高速液体クロマトグラフ法によって調べた。茎葉乾物重に対する茎乾物重の割合は生長後半に急増した。レタスの葉に含まれる糖としてはフルクトースとグルコースが最も多く,次いでスクロースであった。球の最も外側の葉を除き,フルクタンはほとんど含まれていなかった。一方,茎に含まれる糖としては,スクロースとフルクタンが多く,グルコースとフルクトースは少なかった。茎におけるDP3のフルクタン濃度は結球過程で低下したが,DPの高いフルクタン濃度は上昇した。その結果,DP3-10のフルクタン濃度の合計は結球の過程でも減少しなかった。以上の結果から,レタスの茎に蓄積したフルクタンが結球過程で分解され,球葉の生長に利用される可能性は低いと思われた。
|