1.Compartmental analysis法を用いて、セイヨウナシ、メロン、イチゴ果実での糖の細胞内局在場所を検討したところ、その大部分が液胞内に蓄積することを明らかにすることが出来た。また同様な方法により細胞内とアポプラストの体積を求め、これに基づいて細胞内とアポプラストの糖濃度を明らかにした。そして果実の成熟に伴って細胞膜の透過性が大きくなり、その結果アポプラストでの糖濃度が高くなることを示した。アポプラストに糖が蓄積することによって、液胞により形成される膨圧及びシンプラストやアポプラストへのアンロ-ディングを小さくし、果実の肥大成長を抑制することを示唆した。 2.メロン及びイチゴ果実の原形質膜には、スクロース、グルコース、フルクトースを細胞内に積極的に取り込むためのキャリアータンパク質が存在した。このタンパク質は未熟な果実では活発に働くが、成熟につれて活性が弱くなった。特にスクロースのキャリアータンパク質は消失した。 3.セイヨウナシ果実から、我々が果実において確立した亜細胞分画法に従って、液胞膜を調製し、トノプラスト小胞内への各糖の透過機構を明らかにすることを試みた。その結果、トノプラスト小胞にはグルコース及びフルクトースを取り込むキャリアータンパク質が存在し、その活性は強かったが、ATPやプロトンによって促進されなかった。このことより、このキャリアータンパク質は能動輸送のためではなく促進拡散のためにあることを示唆した。一方、ソルビトールやスクロースに対するキャリアータンパク質も存在したけれどもその活性は弱く、ATPやプロトンによる促進も認められなく、促進拡散に働くことを示唆した。
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