研究概要 |
液胞タイプのH^+-ATPase、H^+-PPaseそして水チャンネルと思われるVM23の抗体を用いて、セイヨウナシ果実の生長・成熟におけるそれらの活性とタンパク質量の変動を検討した。その結果、活性とタンパク質の発現はいずれも一致した。H^+-ATPaseは未熟な果実よりも成熟した果実においてより高い活性を示し、果実肥大に伴う液胞の生長や物質の蓄積に関与すること、またH^+-PPaseはむしろ幼果において活性が高く、細胞分裂に伴う液胞の構築及びピロリン酸の分解に機能すること、そしてVM23は幼果で多く液胞の構築に関与することを示唆した。一方、セイヨウナシの成熟果よりトノプラストを調製し、トノプラスト小胞内への各糖の透過機構を検討した。メンブレンフィルター法により糖の透過を調べたところ、キャリアーを介した透過を検知したが能動輸送を検知できなかった。そしてゲルろ過法に変更したがやはり同様な結果を得た。そこで、キャリアーを介した促進拡散による糖の透過機構に注目して、そのキネティックスを解析した。この促進拡散は特にグルコースとフルクトースに対して強く、スクロースとソルビトールに対してはわずかであった。そして、基質に対して低濃度(約0.5mM)と高濃度(約10mM)の2つのKm値を持つ二重飽和曲線を示した。この促進拡散と液胞内への糖の蓄積との関係については不明な点が多いが、少なくとも液胞内に蓄積したグルコースやフラクトースの利用のために機能することを示唆した。現在、この促進拡散系を用いた^<14>C,^3Hの二重ラベル法によって、このキャリアータンパク質をトノプラスト小胞より単離している。
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