果実の品質向上のために果実組織及び細胞内への糖の蓄積機構を明らかにすることを目的として研究し、次の結果を得た。 1.液胞及び細胞外への糖のコンバートメンテーション: 果実組織内での糖の局在と生長過程における変動を、コンバートメントアナリシス法によって調べた結果、イチゴ、メロン果実鞆に70%以上の糖が液胞内、残りの大部分はアポプラストに局在した。そして、成熟に伴って原形質膜の糖に対する透過性がルーズになることによって、アポプラストの糖濃度が増加することを明らかにした。 2.糖の膜透過機構とホルモンによる促進: 果実細胞内への糖の吸収にはキャリーに依存したものと単純拡散によるものとがあり、両者を区別して測定した。イチゴ、メロン果実とも未熟果ではスクロース、グルコース、フルクトースに対するキャリアーが検知されたが、成熟に伴ってスクロースのキャリアーが消失した。また、インドール酢酸はキャリアーによる透過を促進した。一方、アブシジン酸は拡散による吸収を促進したが、これは液胞内への糖の吸収を促進した結果として生じたものであることを明らかにした。 3.液胞膜のプロトンATPaseとプロトンPPaseの役割: 両者をトノプラストより調整し、ニホンナシ果実の生長段階での変動を調べたところ、プロトンPPaseは主に幼果において、プロトンATPaseは主に果実が成熟するときに大きな役割を持つことを明らかにした。 4.液細胞小胞への糖の透過機構: トノプラスト小胞にはクルコース、フルクトースの促進拡散のキャリアーが存在することを明らかにした。
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