研究概要 |
フィリピン産の野生ヤマイモ、Dioscoria hespidaの塊根が現地で害虫防除剤として利用されていることに着目し、その有効成分の探索と数種昆虫に対する生理活性を検討した。また有毒植物として知られているシキミの成分中に殺虫成分の有無を探索するとともにその作用特性を電気生理学的手法を用いて解明した。1)前年度に引き続きDioscoria hespidaの塊根中のコナガ幼虫に対する摂食阻害物質の作用特性と活性物質の分離同定を行い以下の成果を得た。そこでコナガ幼虫を用いて塊根磨砕汁中の摂食阻害活性成分の分離・同定を試みた結果、アルカロイド画分ならびに非アルカロイド画分に強い摂食阻害活性が得られた。アルカロイド画分をTLCにより分画精製し、GC-MS,MS,H-NMR,^<13>C-NMR,IR等による機器分析から、dioscorin(分子量221)とdioscorin-N-oxide(同237)の2種類のアルカロイド化合物が同定された。一方、非アルカロイド画分中の活性成分は上記アルカロイドよりも含有量が少なく、その構造は目下解析中である。Dioscorinおよびはdioscorin-N-oxideは摂食阻害活性ばかりでなくコナガ幼虫の発育をも阻害し、幼虫後期から蛹期には高い致死活性も認められた。2)シキミ果実及び種子の各種有機溶媒抽出物のネッタイイエカ幼虫に対する致死活性を検討した結果、種子をメタノール抽出して得た酢酸エチル可溶部に致死活性を示す成分が存在し、それらのネッタイイエカ幼虫に対するLC_<50>値はメタノール抽出物で63.0μg/ml、酢酸エチル可溶部で43.7μg/mlであった。後者をさらにTCLならびにカラムクロマトグラフィー法により分画精製した結果、TLC上で単一のスポットを与えるまでに精製でき、そのLC_<50>値は000μg/mlであった。同成分に対してディルドリン抵抗性のネッタイイエカ幼虫は感受性系統の幼虫よりも低い感受性を示した。さらに酢酸エチル可溶を用いてパッチクランプ法により同画分中の活性成分の作用機構を調べた結果、活性成分はピクロトキシンと同様に神経細胞上のGABAレセプターを阻害し、EC_<50>値は0.42μg/mlであったが、阻害機構の詳細な解析から従来の環状ジエン塩素系殺虫剤のGABAレセプター阻害とは異なると考えられた。
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