本研究で得られた研究成果は以下の通りである。 1.トウモロコシごま葉枯病菌(Cochliobolus heterostrophus)のメラニン生合成に関与する遺伝子の解析を行った。このうち、リダクターゼ遺伝子Brn1をクローニングし、塩基配列を決定した。これは、804bpからなるオープンリーディングフレーム(ORF)からなり、2つのイントロンを含むものであった。そして、アミノ酸267残基で構成されるタンパク質をコードしているものと推定した。本遺伝子はトウモロコシごま葉枯病菌において、ゲノムあたり1コピー含まれていた。 2.先に明らかにしたBrn1遺伝子の塩基配列を用いて、いわゆるイネ科植物寄生性Helminthosporium属菌として取り扱われてきたBipolaris、Curvularia、Drechslera、Exserohilumの各属菌の系統関係の推定を試みた。Brn1遺伝子の部分配列をPCRプライマーとして用い、これら4属所属菌のうちいくつかの代表的な種についてBrn1遺伝子を増幅し、塩基配列を決定した。得られた塩基配列をもとにアライメントを行ったところ、供試菌のBrn1遺伝子はイントロンを除く全領域にわたって、よく保存されていた。近隣結合法により系統関係を推定したところ、これら供試菌4クラスターに分岐した。得られた樹形は4属のBrn1遺伝子の分化をよく反映していたが、形態学的特徴に基づく4属の系統関係とは異なる部分もあった。この結果、Helminthosporium brizaeはDrechsleraに属すこと、Exserohilum属菌は、比較的新しくBipolaris-Curvulariaから分化した可能性が示唆された。また、同一種であっても分生子形態の変異がとくに著しい菌群であることが明らかとなった。 3.植物病原菌の性状に関するその他の研究結果も併せてとりまとめた。
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