研究概要 |
イネ白葉枯病菌をはじめとするいくつかの植物病原菌においては宿主植物に対する病原性や、非宿主植物に対する過敏感反応の誘導に関与する遺伝子としてhrp遺伝子群を持つことが確認されている。本研究においては、hrpXo産物に対する抗体を作製し、白葉枯病菌の宿主イネおよび非宿主ササゲへの侵入時における本タンパク質の発現と局在性について検討した。大腸菌を用いたin vitro発現系を用いてhrpXoのコードするタンパク質の一部を発現させ、これを抗原として抗体を作製した。感染イネ葉導管内の免疫電顕観察により、hrpXoは白葉枯病菌の菌体内に特異的に局在することが確認された。また、本タンパク質が感染特異的に発現することも確認された。一方、非宿主であるササゲに白葉枯病菌を接種した場合、7時間後から植物側の抵抗反応と考えられる薄膜状物質による細菌の封じ込め、およびその後の細菌の崩壊が電顕観察により明らかにされ、また、過敏感反応による壊死斑の形成は接種後12時間以降に認められたが、hrpXo産物は、接種3時間後においてすでに発現され菌体内に蓄積されていることが確認された。一方、hrpXoを欠失した変異株においては、イネへの病原性、およびササゲへの過敏感反応誘導能を喪失することも明らかにされた。以上の結果は、白葉枯病菌のhrpXo遺伝子は宿主植物への病原性および非宿主植物への過敏感反応誘導に必須であることを明らかにするとともに、その産物は他のhrp遺伝子の発現を制御するタンパク質であるという仮説を強く支持するものである。ウリ類炭そ病菌を用いたシステムでは、1,3,8-trihydroxynaphtalene元酵素遺伝子(THR1)、Scytalone脱水酵素遺伝子(SCD1)遺伝子のコードする蛋白質を大腸菌を用いたin vitro発現系により発現させ、抗体を作製し、免疫電子顕微鏡法により付着器におけるこれら酵素の局在性を明らかにした。
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