研究概要 |
高等動物の性染色体構成には哺乳類に代表される雄ヘテロのXY型と鳥類に代表される雌ヘテロのZW型がある。本研究はニワトリを材料としてZ,W染色体の構築、遺伝子機能と発現制御を解析することを目的とするものである。本年度の主要な研究成果は次の通りである。 1)Z染色体の長腕末端に存在する顕著なヘテロクロマチン領域のDNA配列の性質を明らかにするため、分裂中期のZ染色体からレーザーマイクロダイセクションとランダムなPCR増幅を組み合わせて端部領域特異的なゲノムライブラリーを作製し、これからヘテロクロマチン構成DNAクローンを選別した。その結果、約24kbのNheI断片が約830回反復したマクロサテライト配列がこの領域を構成していることが分かった。雌の減数分裂前期のランプブラッシZW2価染色体に蛍光in situハイブリダイゼーションを適用して、この配列のZ染色体端部への局在と転写の可能性を示した。 2)上記と同様な方法で作製したW染色体特異的ゲノムライブラリーから得られたEE0.6クローンが走鳥類を除く、調べた分類学上の8目にわたる鳥類種全てでW染色体上に保存されている非反復配列であることが分かった。このクローンをプローブとしてこれらの鳥類種のDNAレベルの性判別が確実に行えることを示した。 3)Z染色体の短腕中央部に局在するZOV3遺伝子を見い出し、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する新規遺伝子であることを示した。この遺伝子のcDNAを大腸菌で発現させ、いくつかのポリペプチド断片を精製し、マウスに免疫して特異的なポリクローナル抗体を作製した。間接蛍光抗体法により、この遺伝子が分化過程の卵巣、精巣の一次性索と、分化した卵巣卵胞中の顆粒膜細胞および外莢膜中の一部の細胞群でタンパク質として発現していることが示された。
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