プリン生合成遺伝子であるGARS-AIRS-GART遺伝子はヒトでは染色体21番上に存在しており、ダウン症候群と密接に関係していると考えられる。そこで、プリン代謝と脳との関連から、ダウン症も含めたヒトにおいて、GARS-AIRS-GART遺伝子の2つの転写産物(GARS-AIRS-GARTmRNAとGARsmRNA)の脳でのmRNAレベルでの発現を調べた。 まず正常脳におけるGARS-AIRS-GART遺伝子の2つの転写産物の役割を知るために、これらの胎児期から老齢期にわたる加齢に伴う発現のパターンを解析した結果、全長の転写産物の発現レベルは胎児期において最も強く、加齢に伴い減少する傾向にあった。また、同様に短い転写産物の発現レベルを解析した結果、そのレベルは胎児期の初期において強く、その後現象の傾向を示し、思春期にあたる時期に再び強くなり、老齢期では減少するという傾向を示した。以上のことから、これら2つの転写産物の発現パターンは異なっており、発現が異なる機構により制御されていることが示された。15EA03:次に、ダウン症候群におけるGARS-AIRS-GART遺伝子の発現を解析するために、胎児期40週の正常人1例とダウン症患者1例の臓器(脳前頭葉、肝臓、腎臓、脾臓)における発現を解析した結果、全長の転写産物の発現は脾臓以外の臓器において、ダウン症患者は正常人に比べて少なかった。一方、短い転写産物の発現はダウン症候群のprecocious agingを証明する一つの例と言えるだろう。
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