本研究は小胞体の分化の実体を把握し、それがどのような分子機構によって生ずるのかを、細胞化学・分子遺伝学的手段を用いて解明することを目指す。そのため、本研究計画では酵母を材料として、小胞体に存在するリン脂質の合成系とステロールの合成系に注目し、それら合成系を構成するいくつかの酵素の小胞体中における分布と、それらが小胞体に組み込まれ、維持される機構の解明を図る。本年度における結果は以下のとおりである。 (1)小胞体分画方法の検討と分画した各小胞体成分の脂質合成活性の検討。これまで、ミクロソームを遠心分離によって沈殿物として回収して、その後に緩衝液に再懸濁して分画する方法は良好な結果を与えなかったので、小胞体を沈殿物とせずに行う庶糖密度勾配遠心法を検討し、分布する酵素の種類を調べた。(2)分離・分画した各区小胞体成分の免疫化学的分析。免疫化学的手法により、酵母各小胞体脂質合成酵素タンパク質の分布を調べる。使用する抗血清としては、phosphatidylserine synthase、phosphoethanolamine cytidylytransferaeなどに対するものは調製済み出あるが、それらをさらに精製した。(3)特に申請者らが詳しく構造の分析を行っている、phosphatidylserine synthaseとphosphoethanol-amine cytidylytransferaseについて変異を導入し、酵素中の細胞内局在性決定領域の検出中である。
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