本年度の計画ではSachcaromyces cerevisiaeについて以下のような研究を行う予定であった。 (1)小胞体分画方法の検討と分画した各小胞体成分の脂質合成活性の検討 (2)分離・分画した各区小胞体成分の免疫化学的分析 (3)phosphatidylserine synthase(PSS)とphosphoethanolamine cytidylytransferase(ECT)の細胞内局在性決定領域の分析 これらのうち、(1)に関連して、チトクロームP450は小胞体酵素で、チトクロームP450レダクターゼとともに特殊化された小胞体を形成すると考えられるが、n-アルカンの酸化初発反応を行うチトクロームP450(酵母Candida maltosaに由来)の遺伝子ALK1をGAL1遺伝子プロモーターの下流に結合し、S.cerevisiaeに導入し、ガラクトース含有培地で培養したときに発達する、チトクロームP450に富む小胞体構造に関連する脂質合成酵素活性の変化を検討した。結果として、PSS、phosphatidylinositol synthase、あるいはまた、phosphatidylcholineを合成するCDP-choline経路の酵素などには変化が無く、チトクロームP450の分布する小胞体の発達と小胞体のリン脂質合成酵素活性には直接の相関は見いだされなかった。(2)に関しては抗体の調製が不調で、特筆すべき進歩がなかった。(3)についてはPSSの親水性アミノ末端領域を欠失させた誘導体タンパク質がin vitroでは野生型のものと同等の活性があるにもかかわらず、in vivoで生産させると、本来の小胞体よりも速く沈降する画分に分布し、欠失させた領域がPSSの細胞内分布に必須であることが明らかとなった。このとき、宿主の生育が遅くなったが、リン脂質組成は正常のものと変わらず、細胞内における分布の異常が生育の阻害を結果すると言う興味深い結果を得た。
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