枯草菌は胞子形成開始期に最後のDNA複製を行ない、複製された染色体DNAは、母細菌とフォアスポアに分配される。胞子形成開始期における染色体分配機構は全く不明であり、DNA複製と細胞分化に関連した極めて興味深い研究課題である。この胞子形成期における染色体分配機構について解析をすすめ、本年度は以下の点について明らかにした。 1、胞子形成開始遺伝子の一つspoOJは胞子形成開始期の染色体分配に強く関与していること、spoOJとオペロンを形成しているorf253産物は、胞子形成を抑制するが、SpoOJがorf253を抑制することによって、胞子形成が開始されることを示した。 2、SpoOJとOrf253蛋白質の相互作用を調べるため胞子形成を抑制するが、SpoOJとは相互作用出来ないようなorf253変異株を得ようと試みたが、未だ得られていない。 3、胞子形成開始期の重要なシグナル伝達系の構成分であるTeinAやspoOA遺伝子の発現はspoOJ変異によって2/1に低下すること、orf253-spoOJオペロンは、ホロ酵素Eσ^Aによって認識されるプロモーターから転写され、胞子形成開始後は、SpoOA蛋白質によって抑制されることを示した。このことは、染色体分配とジグナル伝達系との相互作用を示している。
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