細菌、酵母、植物及び魚類胚細胞を用い、研究計画調書等に記載の平成7年度研究計画を、以下のようにほぼ達成する事が出来た。 1.細菌、酵母及び植物の発信する細胞増殖促進シグナルを厚さ1ミリから2ミリメートルの鉄板を通じて数種類の細菌、酵母細胞に受信させた。この実験を定量的に行って再現性を確かめ、同種類および異なった種類の細胞間でシグナルの交差応答が行われる事を確認した。鉄板を通じてシグナルの伝達が行われる事から、このシグナルは音波である事が推論された。 2.メダカの発生卵を用いて枯葉菌と酵母の発信するシグナルを1ミリの鉄板を通して作用させ、これらのシグナルがメダカ発生卵の孵化を著しく早めたり、遅くしたりする事を見いだした。 3.音波発生機を用いて特定の波長の音波を発生させ、細菌、酵母細胞に働かせた所、細菌バチルス・カルボニフイルスを受信者とした場合、20キロヘルツと30キロヘルツの二つの山を持つ音波が同細菌に強い細胞増殖促進効果を持つ事を明らかにした。他の細菌や酵母を受信者とした場合は、音波は増殖促進効果と増殖阻害効果の両方の効果を表すため、音波の波長領域と細胞増殖制御効果との関係をバチルス・カルボニフイルスの場合ほどはっきりさせることはできなかった。 4.メダカの発生卵に10キロヘルツから30キロヘルツの音波を連続的にあてた場合、音波の強さによってメダカ発生卵の孵化の速度が著しく早めたり、遅くしたりする事を見いだした。 5.超高感度マイクロフォンを用いて枯草菌の発生する音波を検索したところ、約8キロヘルツ、20キロヘルツ及び30-35キロヘルツに極大のある音波の検出に成功した。これらの音波波長領域は、バチルス・カルボニフイルスの増殖を促進する音波波長領域とほぼ完全に一致していた。
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