研究概要 |
1.米粒はコメデンプン粒を貯留する胚乳細胞から構成されるが,胚乳細胞の細胞壁が吸水過程に及ぼす影響を調べるためにセルラーゼ処理した精白米と無処理の精白米を調製し,偏光顕微鏡観察および炊飯中の水分変化測定(NMR imaging)を行った.セルラーゼ処理米は偏光顕微鏡観察によって細胞壁が破壊されていることが確認されたが,炊飯中の水分変化はセルラーゼ処理米と大差はなく細胞壁による吸水抑制制効果は大きくないことが分かった. 2.細胞壁の吸水抑制効果が大きくないことが分かったので米粒を楕円柱形状に成型されたデンプンと見做して,炊飯過程における水分子の移動現象を計算した.水は外側から内部へ拡散するが,糊化反応が進行しないと拡散は抑制される.シミュレーションによる水分分布の計算結果は,水分分布の形状が,炊飯途中で米粒を急冷した試料の2次元NMR imagingによる水分分布の測定結果と良く似たが,水分の絶対値は測定結果の方が計算値より20%以上大きくなった。この不一致の原因は炊飯米が急冷後の保存中あるいはNMR imaging測定中に吸水するからではないかと疑われた.この疑問はreal time測定によって解明できる. 3.炊飯のreal time測定のためにCPMG1次元T2imaging法を開発して用いた.35回程度の積算によりS/N比を高めて1つのimageとして1分程度毎のimageを採取できた.このようにして得た1次元プロファイルを隣接する7つのピクセル毎に平均することで平滑化して水分分布を得た.この方法によって観察した水分分布は炊飯途中で急冷した米粒中の水分分布よりも水分の上昇が急速であることが判明した.これは前項で疑った保存中の吸水を否定する結果であり,米は炊飯の途中で急冷すると逆に水分分布が低下するものとみられる.この原因は米粒の冷却による収縮という可能性がある.
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