研究概要 |
1)烏龍茶のアルコール系香気生成機構の分子レベルでの解明:前年度までに烏龍茶のアルコール系香気前駆体は,ほとんどが2糖配糖体(β-primeverosides)であることを明らかにし,その香気生成酵素(β-primeverosidase)をやぶきた種茶葉から精製した.本年度は,下記のようにしてp-nitrophenyl β-primeveroside(p-NP-Pri)を合成することができたので,中国から入手した烏龍茶水仙種および日本産やぶきた種の新鮮葉中の香気生成酵素の精製を効率よく行うことができた.いずれも,SDS-PAGEにて61KDaに単一バンドを示し,ほとんど同一の酵素であることが示唆された.Eugenyl β-primeverosideとの反応で遊離した糖をHPLCにより分析した結果,本酵素はprimeverosideの二糖とアグリコンの結合を特異的に加水分解する酵素であることを確認することができ,茶におけるアルコール系香気生成機構を分子レベルで明らかにすることができた. 2)茉莉花の香気生成機構の分子レベルでの解明:ジャスミン茶の製造に用いられている茉莉花から,linaloolと2-phenylethanol,benzyl alcoholの2糖配糖体を香気前駆体として単離同定した.また茉莉花の開花直後の花から調製したアセトンパウダーの可溶化,カラムクロマトグラフィー等による部分的精製の結果,香気生成酵素は,グリコシダーゼであること,本酵素は少なくとも3種類存在すること,これらの酵素は2糖配糖体をアグリコンとのグリコシド結合のみを加水分解して香気成分へと変換することも明らかにできた. 3)p-NP-Priの酵素合成:香気生成酵素研究に不可欠な基質であるp-NP-Priの酵素合成を行った.市販のp-NP-β-D-glucophyranoside(p-NP-Glc)を受容体基質,xylobioseを供与体基質として市販の酵素をスクリーニングしたところ,Pectinase Gに糖転移活性が認められた.部分精製した酵素を用いてp-NP-Priの酵素合成が行えることを見いだした.この基質を手に入れることで,上記の研究は飛躍的に進展した.
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