本研究の目的は、実験動物を用いて各種の食品成分が動脈硬化の進展にどのような影響を及ぼすかについて明らかにし、ひいてはヒトへの応用を図ることである。そこで先ず、食事性の高コレステロール血症を呈するExHCラットを用いて食事タンパク質の影響について検討した。ラットは動脈硬化に罹りにくい動物であることから、あらかじめビタミンDを投与しておき動物の中膜にカルシウムの沈着を誘発した条件下で食事タンパク質の影響を検討した。食事タンパク質源として動物性タンパク質としてカゼイン、植物性のタンパク質として分離大豆タンパク質を用いた。これらをタンパク資源とする純化食を6カ月間投与することによって弓部大動脈に動脈硬化病変をつくらせることに成功した。動脈から切片を調製し、ヘマトキシリンエオシンおよびエラスティカヴァンギ-ソン、コサ染色などを行い病変を観察した。その結果、大豆タンパク質でカゼインと比較して顕著に動脈病変を抑制できることが判明した。次に、アポE欠損マウスをせ用いて食事タンパク質の影響を検討した。上記の純化食にコレステロールと胆汁酸を添加し、1カ月間飼育した。動脈の凍結切片を調製して下部の大動脈の病変を観察したところでは、ラットの場合と同様に大豆タンパク質は顕著に動脈硬化の進展を抑制することが認められた。なお、ラット、マウスいずれの場合にも血清のコレステロール濃度には顕著な差異は認められなかった。したがって、大豆タンパク質は動脈壁の脂質代謝にカゼインとは異なった影響を及ぼすことが予想された。このようにアポE欠損マウスは短期間で動脈硬化病変を呈することが確認できたので次年度はこのモデルマウスを用いて各種の食品成分の効果を検討していく予定である。
|