研究概要 |
本研究の目的は、各種の食品成分が動脈硬化の進展にどのような影響を及ぼすかについて、ヒトに似た動脈硬化病変を呈するアポE欠損マウスを用いて検討し、ひいてはヒトへの応用を図ることである。昨年度は、アポE欠損マウスをコレステロールと胆汁酸を含むAIN純化食で6週間飼育したところ、カゼインと比較して大豆タンパク質を食事タンパク質源にした場合、動脈硬化病変が軽度であることを認めた。そこで、このような動脈硬化抑制的な作用が大豆タンパク質のどのような成分に起因するのかについて知るために、大豆タンパク質とカゼイン類似のアミノ酸混合物、エタノール処理により脱イソフラボン化した大豆タンパク質、大豆タンパク質エタノール抽出物添加カゼインをタンパク質源にする高コレステロールをアポE欠損マウスに6週間与えた。これらのマウスはいずれも2,000mg/dl以上の高コレステロール血症を呈し、群間で差はなく、また、動脈硬化病変の程度にも違いが見られなかった。このように食事タンパク質の効果が再現できなかったのは、食事へのコレステロールと胆汁酸の添加に基づく極端な高コレステロール血症のためであろうと考えられた。そこで、コレステロールと胆汁酸を含まない純化食でマウスを6カ月間飼育したところ、大豆タンパク質の効果が観察された。また、大豆タンパク質投与マウスでは、血清の低密リポタンパク質画分でのコレステロール上昇が抑制されていた。そこで、このような条件を用いて、大豆タンパク質成分の抗動脈効果作用を再検討している。
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