昨年度は、アポE欠損マウスを用いて分離大豆タンパク質とカゼインの動脈硬化に及ぼす影響を調べたところ、分離大豆タンパク質は動脈硬化を軽減させる作用があることを示した。この分離大豆タンパク質の効果は両タンパク質類似アミ-ノ酸混合物でも再現されることから、タンパク質の効果には両タンパク質のアミノ酸の違いが関与していることが推定された。両タンパク質では、アルギニンとメチオニンの含量が顕著に異なることから、本年度は、カゼインヘのL-アルギニン添加と分離大豆タンパク質へのメチオニン添加の動脈硬化への影響を検討した。 アポE欠損マウスに4種類のタンパク質源((1)分離大豆タンパク質、(2)L-アルギニン添加分離大豆タンパク質、(3)カゼイン、(4)L-メチオニン添加カゼイン)を含む食事を与えて15週間飼育した。摂食量は大豆タンパク質摂取マウスでカゼイン摂取マウスよりも多い傾向にあったが、体重増加量に違いはなかった。血清のコレステロール、トリグリセリドとリン脂質濃度は分離大豆タンパク質摂取マウスで高い傾向にあった。これまでの成績と一致して、動脈硬化の進展は分離大豆タンパク質摂取マウスでカゼイン摂取マウスよりも抑制された。分離大豆タンパク質へのメチオニンの添加は分離大豆タンパク質の抗動脈硬化作用に影響しなかった。一方、カゼインへのアルギニンの添加は、分離大豆タンパク質で観察された動脈硬化抑制作用ほど顕著ではなかったが、カゼインと比較して動脈硬化を抑制した。血清のNO2/NO3の濃度は、分離大豆タンパク質=メチオニン添加分離大豆タンパク質>アルギニン添加カゼイン>カゼインの順に高かった。 これらの結果から、カゼインに対する分離大豆タンパク質の抗動脈硬化作用の違いはアルギニンの含量によって説明できる。アルギニンは、NOの生産を介して動脈硬化の抑制作用を発揮することが推定される。
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